立体ドーム投影用CGの作り方

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2. 立体視でキューブマップな投影の場合


2.1 キューブマップ

■ ドーム投影をするには、超広角の素材が必要です。たとえば下図のような立方体の展開図上に素材を作ったり、ドームマスターと呼ばれる魚眼でとった映像が必要になります。


立体投影を行うには、視差をつけた2つのキューブマップもしくはドームマスターが必要です。 キューブマップは3DCGソフトなどで、視野角90度で前後左右上下の6方向にカメラを向けてレンダリングをすると作れます。また、キューブマップからドームマスターを作る事ができます。
しかし、視差はどうやってつけるのがよいのでしょうか。


■ 人間の目は左右についているので、立体視の視差は左右につけます。しかし、正面に映像を写すのであればそれでよいのですが、ドームのように視野が広い投影の時、観客が斜め上を見上げたときはどのように視差をつければよいでしょう。 厳密な視差を考えるのであれば、斜め上を見たときの映像は、そのときの観客の目の向きに応じて視差をつけるべきでしょう。

正面 斜め上

しかし、そうすると角度に応じてカメラの位置を少しずつ連続的に変化させなければいけません。しかし、これはかなり特殊なレンダリング法です。このような実装をしている3DCGソフトウェアなどあるのでしょうか?(単に知らないだけかも知れないので、あったら教えて!)

■ ここでは簡易的な方法として、正面向きのずれたカメラの位置をそのまま使って2つのキューブ素材を作ることにして見ます。
この場合、残念ながら正面から外れるにしたがって、だんだん視差は破綻してきます。


2.2 off-axis 法の場合

■ off-axis 法の場合はカメラを単純に2つずらしてCube Mapを作る事になります。もちろん魚眼を作っても良いのですが、角度差の表現が難しいので、Cube Mapを例に使っています。

■ この場合の利点としては、上方の面も前方と同様の視差がついているので、見せたい方向を天頂方向にしてもまったく問題がないことがあります。

■一方で、左右の面への投影する映像に対してはカメラが前後方向に並んでしまって、視差がまったく破綻してしまいます。

■また、off-axis法は撮影した絵をそのまま投影するのではなく、ずらして投影しなければならないという欠点がありましたが、平面ではなくDomeに投影する際にどのようにしてずらすのかという問題があります。


off-axisで作った映像を回転方向にずらして投影したものは、次に述べるtoe-inと実質的に同じです。(映像を作ってから回転方向にずらして投影するか、映像をあらかじめ回転方向にずらして製作しておくかの違いです。なんか知らないけど、そうじゃないと強硬に突っかかってくる謎の人がいたのもいい思い出です。)


2.3 toe-in 法の場合

■ toe-in 法は、カメラを内向きに配置し、撮影した絵をそのまま投影するだけで良いという利点があります。

■ やはり左右向きに投影する映像に対しては、カメラが前後方向に並んでしまって、視差の破綻は起きていますが、toe-in法では遠方の物体を投影する分にはこの問題は軽減されます。
■ 遠方の物体に対しては、物体との距離に対してカメラの位置の違いは無視できるので、遠方の物体の視差には、角度の違いが効いてきます。
そのため、無限遠に配置した遠景(遠くの山並み、雲、星空etc.)などは、カメラの位置は正しくないにもかかわらず、問題なく視差がつくことになります。

■ 一方、カメラを内向きに配置することによって視差をつけているため、上下方向に視点を移すにしたがって視差は弱くなり、天頂方向を向くとカメラは捻り方向に余計な回転成分をもってしまっているため、おかしな絵になってしまうことになります。


2.4 簡易立体投影の限界

■ ここで述べた方法は、本来角度に応じてカメラの位置を変えて視差をつけるべきところを、カメラを動かすこと無しに立体視を実現しようとしているため、前方から外れるにしたがって立体視は崩れてゆきます。

■ いずれにせよ正面が最も正確な立体視になるので、ドームの投影面をできるだけ有効利用することが望ましいことになります。
図のように観客が左側を向いているような、傾斜ドームの場合、toe-in法の軸の傾きを後頭部方向にむけることで、立体視の整った面をより多く有効利用することができます。


■ 参考として、10度の傾斜ドームに対して、toe-inの軸を20度傾けた星空を、中央から正面20度上方を眺めた状態を再現した図が下のようになります。左右視野角180度、上下視野角90度で、広角レンズを平面に落としているために格子がゆがんでいますが、観客が前方を見ている限りほとんど破綻なく投影されています。(ガイドの格子は30度間隔です。)



■ 一方、そのまま真上を向いた状態です。残念ながら天頂付近では視差はずいぶん減少し、後頭部方向のねじりの軸付近では視差が消失しています
このため、天頂付近まで注目したい物体がやってくるような絵作りは、避けたほうが良いことになります。



■ toe-in の軸の回転のさせ方はドーム半径によります。理屈上は目の幅7cmほど星がずれるのが正しい投影です。

しかし、ドームが充分に大きければ星空が「ドーム面」に投影されていても充分に遠くに感じるので 回転させない off-axis 法で充分ということになります。

■ 経験上 10mドーム(半径5m)では、やや狭い感覚がするため、ドーム面よりも奥が無限遠になる toe-in にしたほうがドームが広く感じて良いように思えます。

しかし、15m級になると元からドーム面がかなり遠いので、あまり難しいことは考えずに off-axis 法でも良いかも知れません。


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